最終更新日:2016年4月1日
健康保険審査評価院では、2008年度には、全レセプト(11億1,933万件)のうち、審査をコンピュータチェックで完結するもの(96,597万件)の比率は、86.3%となっています(図表3参照)。
すなわち、限られた人的資源で膨大なレセプトを効率的に処理するため、各医療機関の医療費水準等を指標として、審査職員や審査委員による審査の対象となるレセプトをその必要性が高いものに限定しています。換言すると、審査職員や審査委員による審査の必要性が低いレセプトについては、審査をコンピュータチェックで完結するものと割り切っています。
したがって、精緻なコンピュータチェックが実施されているために審査職員や審査委員によるチェックが不要となっているという訳ではないのでないか、と考えています。
これに対し、支払基金では、
① 全レセプトが審査の対象となる(健康保険法(大正11年法律第70号)第76条第4項及び第5項)。
② 審査の決定が審査委員の2分の1以上の出席を得た審査委員会の合議による(社会保険診療報酬請求書審査委員会及び社会保険診療報酬請求書特別審査委員会規程(昭和23年厚生省令第56号)第2条第1項)。
という現行の制度的な枠組みを前提とすると、審査をコンピュータチェックで完結することは、認められません。
加えて、審査は、保険診療ルールに適合するかどうかの確認ですが、現行の保険診療ルールは、患者の個別性を重視する医療の要請との関係で相当程度の裁量の余地を認めています。それを前提とすると、職員や審査委員によるチェックをすべてコンピュータチェックで代替することは、困難です。
また、コンピュータチェックの内容については、支払基金及び健康保険審査評価院のいずれでも、記載漏れのチェック、診療行為、医薬品、医療材料等のコード、単価等に関するデータベースと照合するチェック、定型的な算定ルールに対する適合性のチェック等となっています。
したがって、支払基金におけるコンピュータチェックの内容が健康保険審査評価院と比較して限定されているという訳ではないのでないか、と考えています。
いずれにせよ、「支払基金サービス向上計画(平成23~27年度)-より良いサービスをより安く-」(平成23年1月13日)(PDF:1,684KB)に基づき、コンピュータチェックの充実を図ることにより、医科電子レセプトに係る原審査査定点数のうち、コンピュータチェックを契機とする部分の比率について、平成27年度中に7割程度とすることを目指しています。
なお、更にコンピュータチェックの充実を通じて審査の充実を図るためには、保険者、診療担当者等の関係者間での議論を経て、レセプトの記載要領や電子レセプトの記録条件仕様の見直しに関する成案を得ることが必要です。これについては、支払基金としても、厚生労働省「審査支払機関の在り方に関する検討会」等において、論点を提起しています。